ジェノヴァといえば、バジル。
この街の空気には、
ほんのりと緑の香りが混じっている。
オールドタウンに入ると、
少し空気が変わる。
狭い路地。
光の届きにくい壁。
どこか危うくて、
でも、妙に落ち着く。
ナポリに似た、
あの感覚。
夜になると、
その路地が生き返る。
地元の人たちで埋まり、
外から来た人間は、
少しだけ“よそ者”になる。
この街は、
観光のために開かれているわけじゃない。
生活の延長に、
店がある。
入ったのは、
そのど真ん中にあるリストランテ。
Cucina Valoria。
その日のメニューで勝負する店。
だからか、
ジェノヴァなのに、
ペストがない。
それでも、聞いてみる。
「ジェノベーゼ、できる?」
返ってきたのは、
「いいよ」の一言。
メニュー外。
でも、それがいい。
ワインを飲みながら、バジルと相性のいいトマトを纏った軽めのシーフードで整える。
そして、その一皿が供される。
パッパルデッレのジェノベーゼ。
幅広の麺に、
しっかりと絡むバジル。
思っていた形じゃない。
でも、これが、
この街の正解。
レシピじゃない。
その日の空気と、
その店の判断で、
料理が決まる。
ジェノヴァのバジルは、
固定された味じゃない。
街の中で、
揺れている。
Genova.
香りは、路地で完成する。
