都市は、壊れた。誰もがそう思ったに違いない。
でも、本当に壊れたのだろうか。
火山灰が街を覆ってしまいました。
屋根を潰し、あらゆる命を奪い、
都市を地中へと埋めてしまいました。
ここまでは”災害”だ。
が、その先が違った。
火山灰は雨を防ぎ、風を防ぎ、光を遮る。
だから色は褪せず、木は朽ちず、壁画の色は残り、
パン屋も浴場も洗濯屋も居酒屋も、2000年前の日常をそのまま眠らせた。
何より驚いたのは、壁に残された無数の落書きです。
「次の選挙には○○候補を。」
「○○は最高の剣闘士だ。」
「《下ネタPトーク》」
そして、「愛してる。」
恋文も、政治広告も、下ネタも、
まさか2000年後に誰かに読まれるなんて思ってもいなかっただろうな。
そんな誰にも見せるつもりのなかった言葉まで、
2000年の時間を越えて今も読まれている。
普通なら最初に消えるはずのものなのに。
でも、一度すべてを覆った火山灰が、皮肉にもそれらを守り続けたっていうね。
破壊したのは火山だったけど、守り保存したのは、火山灰だったっていうね。
希望とは、最初からそこにあるものではない。
時に、絶望が積み重なった先で、静かに姿を現すから人生は楽しい。
ポンペイは、失われた都市ではない。
希望が1700年間、眠っていた都市だった。
つづく
